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横谷 明徳; 赤松 憲; 藤井 健太郎; 鵜飼 正敏*
International Journal of Radiation Biology, 80(11-12), p.833 - 839, 2004/12
被引用回数:8 パーセンタイル:48.81(Biology)窒素及び酸素の内殻励起と、これに引き続き起こるオージェ過程により引き起こされるDNA塩基損傷のメカニズムを明らかにするため、SPring-8のアンジュレータービームラインに新たに設置された電子常磁性共鳴(EPR)装置を用いて、グアニンラジカルを調べた。この装置は、軟X線の照射とこれにより試料中に生じるラジカル測定を同時に行うことが可能である。このようなユニークな装置の特性を生かすことで、グアニンペレット中に極めて短寿命のラジカルが生じることが明らかにされた。このラジカルは、ビーム照射を止めても77kで安定に存在するグアニンカチオンラジカルとは、明らかに異なるスペクトルを示した。この短寿命ラジカルは、特に酸素の1S共鳴励起により強く観測され、窒素のK殻励起ではほとんど生じなかった。以上のことからグアニンラジカルの生成には、分子中のカルボニル酸素が重要と結論された。
横谷 明徳; 赤松 憲; 藤井 健太郎
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 199, p.366 - 369, 2003/01
被引用回数:3 パーセンタイル:27.69(Instruments & Instrumentation)DNA損傷の生体機構の物理化学的初期過程を解明することを目的とし、SPring-8の原研軟X線ビームラインの生物ステーションに電子常磁性共鳴装置を設置し放射光照射によりDNA構成分子に生じるラジカル種を測定している。本研究ではグアニンとチミンというふたつの代表的な核酸塩基を試料とし、酸素のK殻励起波長の軟X線を照射した時に現れるEPRシグナルを測定した。その結果、ビーム照射中にのみ現れる短寿命の不安定ラジカルと、ビーム照射によりしだいに蓄積してゆく安定ラジカルのふたつの成分が存在することを見いだした。酸素のK殻励起により電子がひとつ失われたカチオンラジカルがこの短寿命のシグナルであると推測され、これらが次第に安定なラジカルに固定されてゆくと考えられる。
Pinak, M.
Journal of Molecular Structure; THEOCHEM, 583(1-3), p.189 - 197, 2002/04
突然変異に関与する酸化DNA損傷8-オキソグアニン(8-oxoG)の局部的な構造とエネルギーへの影響を、分子動力学(MD)シミュレーションによって調べた。8-oxoGを15塩基対のB-DNAの中央に位置するグアニンと置換した系で、計算コードAMBER5.0を用いて2nsのMDシミュレーションを行った。損傷部分では、水素結合の崩壊が生じB-DNA構造が部分的にゆがむことが観測された。8-oxoGの向かいの(対をなす)シトシンに隣接するアデニンは、DNA二重らせんからはじき出されることがわかった。この構造の変化が、修復酵素が損傷DNAと結合する上で好都合であると推測される。また、DNA構造の不安定性は、8-oxoGを含むヌクレオチドと隣のヌクレオチドとの間の強い静電的な斥力により生じることことが示された。